暇つぶし

父親の床屋についていく。姉も妹もおらず、私1人だった。
幼い私は、本を手に取ることもなく、合皮の黒い長椅子に座って、父親と理髪師の姿を見ていたような、その位置からは、見えなかったような。

見慣れないものを観察していれば、飽きることはなく、床に足の届かない長椅子にじっと座っていた。
家に帰ると、父親が母親に「長いこと静かに待っていられた私に驚いた」と言っていた。
誰かの何かについて行って暇つぶしする、ということが昔から多かった気がする。
マリンパークにはゴルフの練習場がある。

ブルックリンの南、コニーアイランドのすぐ東に位置している。
主人のゴルフの練習に付き合う。

私はゴルフをしないので、暇に任せて、ゴルフネットの裏を散歩してたら、湿地に行きあたった。
満潮時には水の中に沈むであろうその場所は、どこからか流れ着いた薬瓶、お酒の瓶、朽ちた船、エンジンが転がっている。

動くことのない、石や大きなガラクタは緑色のコケに覆われて、オレンジの夕日にも照らされて呼吸が止まるくらい奇麗だった。

興味は溢れ、どんどん歩き進めると、一部の湿地にはびっしりと貝が発生していた。
練習を終えて私を探しに来た主人が、湿地へ降りる傾斜の上から、声をかける。
そんな感じの時間の過ごし方が一番合っている。